売却後も家に住めるリースバック
「自宅を売却して現金化したい。でも、今の家からは引っ越したくない」
このような方が検討する方法の一つがリースバックです。
リースバックなら、自宅を不動産会社などに売却した後、賃貸借契約を結ぶことで、売却した不動産にそのまま住み続けることができます。
一方で、「売却した後もずっと住める」「売った金額と同じ条件で買い戻せる」とは限りません。
特に近年は、リースバックについて、家賃の値上げや契約期間、買い戻し条件などをめぐるトラブルが問題になっています。国民生活センターも2026年8月に、リースバックに関する注意喚起を行っています。
この記事では、不動産売却の専門家が、リースバックの仕組みからメリット・デメリット、契約前に確認したいポイントまで詳しく解説します。

リースバックとは?売却した自宅に住み続ける仕組み
リースバックとは、所有している自宅を売却し、その後はその家を賃借して住み続ける仕組みです。
一般的なリースバックの流れは以下のとおりです。
- 自宅を売却
- 売却代金を受け取る
- 賃貸借契約を締結
- 家賃を支払って今の自宅に住み続ける
国土交通省も、住宅のリースバックについて、自宅を売却して一括の資金を得た後、毎月賃料を支払うことで住んでいた住宅に引き続き住むサービスと説明しています。
つまり、リースバックを利用すると、「家を売って現金化する」と「引っ越さずに住み続ける」を同時に実現できる可能性があります。
リースバックで自宅を売却すると所有権はどうなる?
リースバックでは、自宅を売却すると、原則として所有権が買主であるリースバック事業者へ移転します。
そのため、売却後は自分の持ち家ではなく、賃貸住宅として住むことになります。
ここは通常の不動産売却との大きな違いです。
通常の売却なら、売却後は買主がその住宅を利用することになります。
一方、リースバックでは売却後も元の所有者が賃借人として住み続けます。
そのため、契約前には「売買契約」と「賃貸借契約」の両方を確認することが重要です。
リースバックのメリット
1.売却後も住み慣れた家に住み続けられる
最大のメリットは、引っ越しをせずに自宅に住み続けられることです。
子どもの学校や仕事、通院、近隣との付き合いなど、住環境を変えたくない事情がある方にはメリットがあります。
特に、「家を売却する必要はあるが、引っ越しは避けたい」という方に向いています。
2.まとまった資金を受け取れる
自宅を売却するため、売却代金を一括で受け取れる点も特徴です。
- 老後資金を確保したい
- 住宅ローン以外の借入を整理したい
- まとまった資金が必要
- 相続前に資産を整理したい
リースバックは多様なケースで検討されることがあります。
ただし、「まとまったお金が入るから安心」と考えるのは危険です。
売却後は家賃が発生するため、売却後の資金計画まで考えることが重要です。
3.引っ越し費用や売却後の住み替え負担を抑えられる
一般的な売却の場合、売却後は新居を探して引っ越す必要があります。
リースバックなら、住み慣れた住宅に住み続けられるため、引っ越しに伴う費用や手間を抑えられる可能性があります。
リースバックのデメリット
1.売却すると自分の所有物ではなくなる
リースバック最大の注意点です。
自宅を売却した時点で、所有権は買主に移ります。
これまでのように自由に住宅を処分したり、改修したりできるとは限りません。
「住み続けられるから、今までと何も変わらない」と考えないことが大切です。
2.毎月家賃を支払う必要がある
リースバックでは、売却後も住み続ける代わりに、毎月家賃を支払います。
そのため、売却時にまとまったお金を受け取っても、その後の家賃負担が続きます。
国民生活センターも、居住期間が長くなることで、家賃の総額が住宅の売却金額を上回る場合があるとして注意を呼びかけています。
例えば、売却価格1,500万円、家賃8万円の場合、10年間住み続ければ家賃だけで960万円になります。
さらに長期間住み続ければ、家賃負担は大きくなります。
そのため、リースバックでは「いくらで売れるか」だけでなく「何年間住むのか」「家賃はいくらか」まで計算することが重要です。
3.ずっと住み続けられるとは限らない
「リースバック=一生住み続けられる」というわけではありません。
賃貸借契約の種類や契約内容によっては、契約期間が定められている場合があります。
国民生活センターも、リースバックの賃貸借契約では期間が定められる場合が多く、ずっと住み続けられる保証はないと注意しています。
したがって、「何年間住める契約なのか」「契約期間終了後に更新・再契約できるのか」は、必ず確認しましょう。
リースバックで特に注意したい5つのポイント
① 売却価格だけで判断しない
リースバックでは、一般的な市場価格より売却価格が低く設定される場合があります。
一方で、家賃が高く設定されることもあります。
そのため、売却価格+家賃+契約期間をまとめて比較することが重要です。
「高く売れた」「すぐに現金化できた」という一部分だけで判断してはいけません。
② 家賃の値上げ条件を確認する
リースバック契約後に家賃が値上げされ、支払いが難しくなるケースもあります。
2026年8月に国民生活センターが公表した相談事例でも、契約後に家賃の値上げを提示されたケースが紹介されています。
契約前には、賃貸の条件を確認しましょう。
- 現在の家賃
- 家賃改定の条件
- 更新・再契約時の条件
③ 定期借家契約か普通借家契約か確認する
賃貸借契約の種類は非常に重要です。
契約期間が終了した際に住み続けられるのか、再契約できるのかなど、契約内容によって違いがあります。
「住み続けられる」という説明だけで判断せず、契約書を確認して、居住できる期間を明確にすることが大切です。
④ 買い戻せるとは限らない
リースバックでは、「将来的にお金が貯まったら家を買い戻したい」と考える方もいます。
しかし、必ず買い戻せるとは限りません。
買戻しの条件が契約時点で明確になっているのか、価格はいくらなのか、買い戻し期限はあるのかなどを確認する必要があります。
実際に国民生活センターには、買い戻しを希望したところ、売却価格を大きく上回る価格を提示された相談事例もあります。
⑤ 契約を急がない
リースバックは、不動産を売却する契約です。
一度契約してしまうと、簡単に取り消せるとは限りません。
国民生活センターは2026年8月、不動産業者への自宅売却ではクーリング・オフが適用されないことについても注意喚起しています。
「今日契約すれば高く買います」「今すぐ現金が必要ならリースバックしかありません」などと急かされた場合は、特に慎重に検討しましょう。
リースバックと通常の不動産売却の違い
リースバックと一般的な仲介売却では、目的が大きく異なります。
| 比較項目 | リースバック | 通常の仲介売却 |
|---|---|---|
| 自宅の売却 | ○ | ○ |
| 売却後も住む | ○ | 原則不可 |
| 所有権 | 買主へ移転 | 買主へ移転 |
| 売却後の家賃 | 必要 | 不要 |
| 引っ越し | 基本不要 | 必要 |
| 売却価格 | 市場価格より低くなる場合あり | 市場価格を基準に売却 |
| 長期間住めるか | 契約内容による | 不可 |
| 買い戻し | 契約内容による | 原則別途交渉 |
「売却した後も今の家に住み続けたい」という目的があるならリースバックが選択肢になります。
しかし、できるだけ高く売却したいのであれば、通常の仲介売却も含めて比較することが重要です。
リースバックより「通常売却+住み替え」が合うケースもある
リースバックを検討する際は、最初からリースバックだけに絞らないことをおすすめします。
例えば、「自宅を高く売却して、別の賃貸住宅へ移る」という方法もあります。
自宅を市場価格に近い価格で売却できれば、売却後の資金を住み替え費用や老後資金に活用できる可能性があります。
また、不動産会社によっては、仲介・買取・リースバックなど複数の売却方法を比較したうえで提案してくれる場合があります。
自分に合った方法を知るためには、一つの選択肢だけで判断しないことが重要です。
リースバックが向いている人
リースバックは、次のような方には選択肢の一つになります。
- 自宅を売却してまとまった資金を確保したい
- 引っ越しをしたくない
- 今の地域で生活を続けたい
- 売却後も一定期間住み続けたい
- 将来的な住み替えまで時間がほしい
ただし、家賃を長期的に支払えること、そして契約期間や更新条件を理解していることが大前提です。
リースバックをおすすめしにくいケース
リーズバックは慎重な比較が必要です。
- 毎月の家賃負担が大きい
- 年金など将来の収入が減る可能性がある
- 長期間その住宅に住み続けたい
- 自宅をできるだけ高く売りたい
- 将来必ず買い戻したい
特に「売却して資金を得た後、その家賃を長期間払い続ける」という仕組みなので、現在だけではなく5年後、10年後の家計まで考えて判断することが重要です。
リースバックを検討するなら、まず「普通に売った場合の価格」を知る
リースバックを検討する前に、ぜひ確認しておきたいのが、「この家は通常の売却ならいくらで売れるのか?」ということです。
例えば、通常売却なら3,000万円、リースバックなら2,400万円だった場合、600万円の差があります。
この差額を考慮せずに「住み続けられるから」という理由だけでリースバックを選ぶと、結果的に不利になる可能性があります。
そのため、リースバックの査定だけではなく、通常の仲介売却価格・不動産会社による買取価格・リースバックの売却価格を比較することが重要です。
リースバックと不動産買取、どちらがいい?
「できるだけ早く売りたい」という理由であれば、不動産買取も選択肢になります。
不動産買取の場合、基本的には不動産会社が直接買い取るため、仲介による買主探しが不要です。
ただし、リースバックとは目的が違います。
- 住み続けることを優先するならリースバック
- 早期売却や引っ越しを優先するなら買取
- できるだけ高く売ることを優先するなら仲介
もちろん物件や売主の状況によって最適な方法は異なります。
リースバックを利用する前に確認したいチェックリスト
契約前には、少なくとも次の項目を確認しましょう。
売買契約
- 売却価格はいくらか
- 売却価格は周辺相場と比較して適正か
- 売却後の所有者は誰か
賃貸借契約
- 家賃はいくらか
- 契約期間は何年か
- 更新・再契約できるか
- 家賃が値上げされる可能性はあるか
- 修繕費は誰が負担するか
将来の選択肢
- 買い戻しはできるか
- 買い戻し価格はいくらか
- 買い戻しの期限はあるか
- 契約終了後はどうなるか
これらを曖昧にしたまま契約するのは避けましょう。
リースバックは「売却価格と住み続ける条件」の両方を比較することが重要
リースバックは、「売却した不動産に住み続けられる」という大きなメリットがあります。
一方で、注意点もあるのがリースバックです。
- 売却価格が低くなる可能性
- 毎月家賃が必要
- 契約期間によっては住み続けられない
- 家賃が値上げされる可能性
- 買い戻せるとは限らない
国土交通省もリースバックについて消費者向けガイドラインを設け、契約内容や利用時の留意点を示しています。
そのため、「住み続けられる」というメリットだけで判断するのではなく、通常売却・不動産買取・リースバックを比較して、自分にとって最も有利な売却方法を選ぶことが大切です。
まとめ|売却した不動産に住み続けたいなら、リースバックだけで決めない
自宅を売却した後も住み続けたい場合、リースバックは有力な選択肢の一つです。
しかし、リースバックは単純な「自宅を売って住み続けるサービス」ではありません。
売却価格・家賃・契約期間・更新条件・買い戻し条件を総合的に比較する必要があります。
特に重要なのは、リースバックの提案だけを見るのではなく、「通常売却ならいくらで売れるのか」を先に知ることです。
不動産会社に相談する際は、「リースバックならいくらになるか」だけではなく、「仲介ならいくらで売れる可能性があるか」「買取ならいくらになるか」まで比較してもらいましょう。
自宅の売却を検討しているものの、「売った後も今の家に住み続けたい」「リースバックと通常売却のどちらが得なのかわからない」という方は、まず複数の売却方法を比較してから判断することをおすすめします。
不動産売却では、売却方法によって手元に残る金額や、その後の住まい方が大きく変わります。
売却価格を知ることが、最も失敗しにくい不動産売却の第一歩です。
まずは現在の不動産が「通常売却でいくらになるのか」を確認し、そのうえでリースバックと比較してみましょう。
自宅に売却した後も住み続けるリースバックは、買取価格と家賃設定のバランスがいい不動産会社へ相談するのがオススメです。
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