不動産の売却にも関係する住宅ローン
旧耐震マンションを売るときには、住宅ローンを利用できるかが売却価格・売却期間に大きく影響します。
旧耐震マンションの売却と住宅ローンの関係について解説します。
住宅ローンが不動産購入者の選択肢を増やす
住宅ローンとは、家を買うためにお金を借りることです。
正確には「購入する住宅を担保にすることで住宅の購入資金を融資する金融機関のローン商品」が住宅ローンです。
不動産を購入するときに、貯金などの自己資金で全額支払えるなら住宅ローンは不要ですが、高額なマンションや戸建の購入資金を全額現金で支払えるという方は多くありません。それでは家を持てる人が限られてしまうため、金融機関は購入する家を担保にすることで、購入資金を融資する住宅ローンを商品化します。
担保とは「融資が返済されなくなった時に取得できる資産」です。万が一、借りた人がローン返済できなくなってしまった場合には「その家を売却することで金融機関は融資したお金を回収する」という仕組みです。この「担保価値」があるからこそ、金融機関は貸し倒れのリスクを抑えて住宅ローンとして多くのお金を貸し出しているのです。
手持ちの現金がない買主でも、住宅ローンで不動産を購入することが可能になるのと同時に、不動産を購入できる価格帯が高くなる特徴があります。
住宅ローンはさまざまな金融機関で商品化されています。銀行はもちろん、信用金庫・農協・漁協などでも住宅ローンを扱っていて、金利や審査基準などの違いがあります。また、住宅金融支援機構では「フラット35」という住宅ローンがあり、他の金融機関とは違う独自の審査方法を持っています。
住宅ローンの低金利と減税で不動産価格は上昇
住宅ローンは金融機関からの借金ですから、利息(金利)がかかります。
住宅ローン金利は主に固定金利と変動金利の2パターンに分かれます。固定金利とは返済期間ずっと金利が変わらないことで、変動金利は何年かごとに、その時の国債の金利や日本銀行が出す長期金利などを目安として金利の見直しが行われる金利のことをいいます。
「フラット35」をはじめとする固定金利の場合は、将来的に日本全体の金利が上がったとしても住宅ローン金利が上がることはありません。
月々の返済額が変わる恐れがないため、安心して住宅ローンを利用できますが、変動金利と比較すると固定金利の方が金利が高く設定されています。
住宅金融支援機構【フラット35】「民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)」より
利息額は、借りたお金=元金に、年間にかかる利息額の割合=金利(%)をかけて算出されます。ただし金利は年間にかかる利息の割合なので、月々に支払う利息額を算出するには、12ヶ月で割る必要があります。
例えば3,000万円を1%の金利で借りるとすると、1回目の返済では3000万×1%÷12=2万5000円の利息がかかります。2回目以降の返済にも、元金の残高に応じて利息がかかっていきます。このように計算していくと、35年で返済する場合には、利息は約554万円、総支払額は約3,554万円にものぼります。(※ローン返済で多く使われる元利均等方式で算出)
不動産購入者にとっては、住宅ローン金利が高ければ借りられる額は少なくなり、金利が低ければ借りられる額は多くなるのです。つまり、住宅ローン金利が低ければ低いほど不動産の購入層は増えることを意味し、低金利の時期には買う・売るの両方で価格が上がりやすいということを意味します。
現在、住宅ローンの変動金利は0.5%〜1.0%が多く、他の金融商品と比べてもかなり金利が安く設定されています。ネットバンクでは0.4%台の住宅ローンもあり、この住宅ローン低金利は日銀が金融緩和を発表した1999年から量的緩和策が解除される2006年まで、2008年のリーマン・ショックを挟み、日銀が異次元の金融緩和を発表した2013年から現在に至るまで、過去に例を見ない低水準で長期間推移しています。
国としても「住宅ローン減税」という減税制度を設けて積極的に住宅ローンを利用して貰えるよう推進しているのです。
住宅ローン金利が低ければ低いほど不動産の購入層は増えるため、低金利の時期には買う・売るの両方で価格が上がりやすいのが不動産価格ですが、購入層を押し上げ需要が高まった結果、新築分譲マンション価格は高騰しています。
この低金利によって新築分譲マンションの値上がりの影響で中古マンションの値段も上がるため、売却をする売主にとっても良い影響があるといえますが、近年では住宅ローンを利用できないマンションが増えているのです。
旧耐震マンションの売却に影響する住宅ローン
住宅ローンを利用する場合には、金融機関の審査が必要になります。
住宅ローン審査では債務者(借りる方)の年齢・年収・勤続年数・家族構成・現在の借入状況・過去の借入返済歴などのバランスを考慮して、住宅ローン融資を実行するか否かが判断されるのはご存知の方も多いかと思いますが、他にも不動産の土地・建物に関わることで住宅ローン利用ができないことがあります。
住宅ローンが使えない不動産の場合、現金で買える方に買主が限られるため、売却価格は下落します。
耐震基準とは
耐震基準とは、建物の耐震性能についての基準で、地震に対する強さを保証するものです。
地震力に対する強度が初めて法律に盛り込まれたのは、1924年(大正13年)。これは前年(大正12年)の関東大震災を受けてのことです。10万人強の死者を出した関東大震災は、史実に残る日本の災害の中では過去最悪のものでした。耐震基準は大地震のたびに見直されて、より厳しいものになってきています。
中でも大きな変化があったのは、次の二つのタイミングです。
・1981年(昭和56年)6月 建築基準法改正(新耐震基準の導入)
・2000年(平成12年)6月 建築基準法改正
1981年の改正では、宮城県沖地震を受けて耐震基準が大きく見直されました。そのため1981年以前に建てられた建物を「旧耐震」、以後に建てられた建物を「新耐震」と大きく分けて呼んでいます。
2000年の改正では、1995年の阪神・淡路大震災を受けて、木造建築に対する構造上の決まりが変わりました。
旧耐震基準と新耐震基準の違い
それでは旧耐震と新耐震では何が変わったのか。わかりやすい違いは、想定する震度です。
・旧耐震基準…「震度5程度の地震で倒壊しない建物であること」
・新耐震基準…「震度6強から7の地震でほとんど損傷しない建物であること」
また、倒壊だけでなく損傷を防ごうという点が大きく変わりました。旧耐震は、倒壊さえしなければ人命が守られるという考え方がベースにあります。しかし、大地震は一回揺れたら終わりとは限らないため、新耐震では損傷自体しないことを目的としています。
大地震の報道では「最大震度」が強いイメージとして記憶に残りますが、本当に恐ろしいのは最大震度ではなく、どれくらいの規模の地震が何回起こるかです。2016年4月14日の熊本地震では、震度6を上回る地震が7回も起きています。最初の一回を踏み堪えたとしても、4回目は?5回目は?6回には耐えられるのか?と考えると、「震度6の地震で倒壊しない」だけでは足りないことが納得いただけるでしょう。
首都圏に現存する旧耐震マンションは45万戸超
首都圏 | 東京23区 | 東京都下 | 神奈川県 | 千葉県 | 埼玉県 | 首都圏合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
棟数 | 4,430 | 410 | 1,001 | 489 | 416 | 6,746 |
戸数 | 241,045 | 26,578 | 79,777 | 63,870 | 40,290 | 451,560 |
2017年に(株)不動産経済研究所が発表した、現存する旧耐震マンションについて調査した「全国の旧耐震マンション調査結果」では、首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)の旧耐震マンション数は6,746物件(45万1,560戸)に上り、全国の56.9%を占めています。
※民間が分譲した物件を対象として、東京都は昭和42年以降、その他首都圏(神奈川県、埼玉県、千葉県)は昭和43年以降、首都圏以外は昭和48年以降に発売された物件を中心に調査を行っており、過去の発売データを元に、インターネットなどを利用して現存しているか、所在地(住居表示)等を確認したもの。
旧耐震マンションの住宅ローンを審査しない金融機関
昭和56年以前に建築された旧耐震基準のマンションを住宅ローン仮審査の時点で申し込み不可としている金融機関も増えています。
旧耐震基準で建築されたマンションの中には耐震診断をおこない、耐震補強工事を実施しているマンションもあります。この耐震補強工事で、現行の新耐震基準を満たし、適合証明を取得しているマンションであれば住宅ローン利用できる可能性も高くなりますが、昭和56年(1981年)以前に建築されているマンションは既に築40年以上が経過していることによる老朽化、大地震による倒壊の危険性から、以前に比べて明らかに金融機関の審査が厳しくなり、住宅ローンの利用は難しくなっています。
耐震基準適合証明取得の可否が売却に影響
住宅金融支援機構住宅ローン「フラット35」では、旧耐震基準で建築されたマンションの審査に適合証明の提出が条件となっています。
これは、耐震診断をおこない、耐震補強工事を実施したマンションで、現行の新耐震基準を満たし、適合証明を取得しているマンションであれば住宅ローンの審査が可能ということです。
適合証明を取得できない旧耐震マンションの場合にはフラット35はもちろん、他の金融機関の住宅ローンが利用できない可能性も高くなり、現金で購入できる買主に限られてしまいます。
マンションなどを購入できる現金が手元にある方は、住宅ローンも通りやすく、旧耐震マンションを選ぶ理由があまり無いため、売れづらいマンションは価格の下落に繋がるのです。
住宅ローン控除が使えない
耐震基準適合証明が取得できない旧耐震マンションの場合、住宅ローンを利用できても住宅ローン控除が適用外です。
国税庁では住宅ローン控除の適用条件を次のいずれかに該当する家屋であるものと定めています。
① 取得の日以前 20 年以内(耐火建築物※の場合は 25 年以内)に建築されたもの
※「耐火建築物」とは、建物登記簿に記載された家屋の構造のうち、建物の主たる部分の構成材料が、石造、れんが造、コンクリートブロック造、鉄骨造(軽量鉄骨造は含みません。)、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造のものをいいます。
② 地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合するもの
(注)その家屋の取得の日前2年以内に耐震基準適合証明書による証明のための家屋の調査が終了したもの、その家屋の取得の日前2年以内に住宅性能評価書により耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)に係る評価が等級1、等級2若しくは等級3であると評価されたもの又はその家屋の取得の日前2年以内に既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類により証明されたものに限ります。
③ ①及び②の要件に当てはまらない家屋で、その家屋の取得の日までに耐震改修を行うことについて申請をし、かつ、居住の日までにその耐震改修により家屋が耐震基準に適合することにつき証明がされたもの
住宅ローン控除額は収入や借入額、年末時点での住宅ローン残高によって計算されるため一概にいくらとは言えませんが、節税効果が大きいことが特徴です。この住宅ローン控除が適用されない旧耐震マンションは、エリアや立地など余程の強みが物件にない限り買主が選ぶ理由はあまり無いといえます。
管理が疎かな旧耐震マンション
旧耐震マンションは昭和56年(1981年)以前に建築されており、既に築40年以上が経過していることによる老朽化、大地震による倒壊の危険性から、住宅ローンの利用が難しくなりましたが、以前に比べて金融機関の審査が厳しい理由はそれだけではありません。
旧耐震マンションは住民による自主管理であることが多く、現在は管理会社に任せていても昔は自主管理だったというマンションもあるでしょう。自主管理のマンションでは適正な修繕がされていなかったり、そもそも修繕の計画(長期修繕計画)が無いこともあります。
そういった自主管理のマンションの場合、臨時負担金として各住戸から数十万円〜数百万円単位で徴収し、必要になった修繕費をまかなったり、通常では考えられない程、修繕積立金が高額であったりする特徴があります。
自主管理のマンションでは理事長などが管理費や修繕積立金を管理していますが、マンション管理のプロではないため、必要な管理修繕に使っていくのは難しいことです。中には私的にお金を使っているなどのケースもあるため、金融機関はリスクを考慮し自主管理のマンションの審査は厳しくし、住宅ローンが通らない可能性も高くなります。
自主管理であっても長期修繕計画に基づいて、しっかりと維持管理されているマンションは多くありますが、耐震補強工事で新耐震基準に適合している旧耐震マンションは多くはないのが現状です。
旧耐震のマンションは金融機関が住宅ローンの融資を止めて、現金で買える方にしか売却することができなくなると売却価格は下落します。
最悪の場合、仲介では売却できないということも起こりえるでしょう。昭和56年5月以前に建築された築40年を超える旧耐震マンションは仲介だけではなく買取も含めて売却を検討するがオススメです。
ここまで「旧耐震マンションは売却できない?住宅ローンとの関係」について解説しました。
横浜をはじめ首都圏で旧耐震マンションの売却は、住宅ローンに詳しい専門家へ相談するのがオススメです。
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